新宿で建設が進むアパートメントホテル。建物も内装も計画は固まっていましたが、ホテルの名前だけがまだ決まっていませんでした。クライアントは長く不動産を手がけてきた会社で、ホテルの運営はこれがはじめてです。部屋を貸すのではなく、泊まる時間そのものを選んでもらう。相談は、その入り口になる名前づくりから始まりました。
旅から帰って思い出すのは、部屋の広さより泊まった宿の名前です。訪日旅行者にとっては、その名前が日本の旅の記憶にもなります。しかもこのホテルは無人で、フロントでお客様を迎える人がいません。人の代わりにお客様を迎えるのは、名前とロゴとサインです。まずはそのことを、クライアントと共有するところから始めました。
名前の手がかりとして差し出したのは、「灯る(TOMORU)」という言葉でした。旅先でほっと灯るあかりのような宿に、という想いを込めています。そこからクライアント自身が選んだ名前が「灯 TOMORI」です。ロゴは書の筆づかいで和の空気をまといながら、誰もが気軽に親しめる表情に仕上げました。館名から客室の扉まで同じ顔でそろえ、無人の館内でもお客様が迷わず部屋へたどり着けるようにしています。
2026年9月、灯 TOMORIは開業しました。人のいない館内で、名前とサインが静かにお客様を部屋まで導いています。旅を終えて日本を思い出すとき、そこにこの名前が灯っていてほしい。はじめてのホテルづくりに、クライアントと一緒に込めた願いです。