千秋庵は札幌で100年続く老舗の菓子店です。長く通うお客様に支えられてきた一方で、これからのファンを迎えることも欠かせません。本店を新しくするにあたり、代表や職人が大切にしてきた歴史を重んじながら、本店の在り方を目に見えるかたちにする。それがこの仕事の課題でした。
歴史のある店の風格は大切な財産です。けれど格式が強すぎると、はじめてのお客様は入りにくくなります。私たちは、歴史は飾るものではなくお客様と分かち合うものだと考えています。老舗の雰囲気を守りながら、気軽に入れる空気も同じ店のなかにつくることにしました。
レジの後ろの壁には、工場に残っていたお干菓子の木型を並べました。什器は高さを工夫して、お年を召した方でも、すべての商品を手にとりやすく、低めに計画しています。ノースマンや山親爺などの売れ筋の箱もの商品は、入ってすぐ横の棚に全種類をそろえ、季節の菓子はひとつずつ並べて種類の多さを伝えました。好みの菓子を箱に詰め合わせられる売り場も設けています。内装には木目の素材を選びました。
壁の木型は、札幌で育った人には懐かしく、はじめての人には新しく映ります。昔からのお客様とはじめてのお客様が、同じ店で菓子を選ぶ。その光景が100年の歴史を次へつないでいきます。